民主党の新マニュフェストをざっと見てみる。英字サインは売国奴の証。新自由主義回帰宣言、疲弊耐菅僚内閣の「退散の道」
まず、ざっと見てみた感想。
菅直人の署名が英字なのはなぜだ。気取っているのか。オバマへの恭順のメッセージか。売国奴の証か。
市民運動出身です、市民派ですと有権者におもねる菅直人HISTORYがうざい。
立憲主義が消えた。前回のマニュフェストで最後に恥かしげに掲げられていた
「憲法とは公権力の行使を制限するために主権者が定める根本規範である」というのが近代立憲主義における憲法の定義です」との文言は跡形もなくなった。憲法マニアの僕としては淋しい限りである。
中身について。
まず課題設定の焦点をずらしている。
「政治のリーダーシップを欠いたまま、産業構造や社会構造の変化に対応できていない政策を続けた結果、経済の長期低迷、財政赤字の拡大、社会保障の不安定化が進みました。」(マニュフェストP2)
僕は雇用規制の破壊、社会福祉の破壊は過去の自公政権の強力な政治のリーダーシップにより完成されたと考えている。「政治のリーダーシップを欠いたまま」という認識には強い違和感を持つ。政権交代によって政権を得た民主党はこの前政権の政策に対するアンチテーゼを立てて推進すべきだと僕は思っていた。
現に前鳩山政権のマニュフェストでは不十分ながら「命を大事にすることも、ムダづかいをなくすことも、当たり前のことかもしれません。しかし、その「当たり前」が、壊れてしまっているのです。」と主張していた。
「政治のリーダーシップを欠いたまま」という認識から出発する菅政権は自公政権へのアンチテーゼを建てるという姿勢を捨てたと見るべきだろう。後で述べるが、自民党の提案する消費税10%を「わが意を得たり」と受け売りするところにその姿勢が如実に現れている。
そして出てくるのが「第三の道」である。ちなみにマニュフェストの「第三の道」は「日本の新たな「第三の道」 」アンソニー・ギデンズ著の剽窃であろう。アマゾンの記述によれば、ギデンズは「自由市場主義」と「福祉国家主義」の弊害を乗り越え、両者をより高い段階で統合するという弁証法的な枠組みでの「第三の道」を提言しているようである。
しかし、菅政権が掲げているマニュフェストによると「第一の道」は企業にお金をジャブジャブ注ぎ込みました、「第二の道」は企業に好き勝手させました、といことである。その後に続くのは「だから企業にはこういった政策はできなくなりましたのでこうします」というべきところ、これを隠蔽するために「第三の道」というキャッチフレーズが用いられ、誤魔化し韜晦しているに過ぎないと見るべきだろう。弁証法など入る余地もない。
だから採るべき「第三の道」の喫緊な課題は「環境問題」や「少子高齢化」という方向にずらさざるを得ない。企業にこうしますとの明言でもなく、人の命にかかわる雇用規制や福祉の修復でもない。そして出てくる結論は、企業に対して行う積極策および雇用規制破壊の放置により企業経済の拡大(強い経済)をはかります、それによって税収が伸び財政の再建(強い財政)がはれます、税収がのびれば「トリクルダウン」効果で社会保障の充実(強い社会保障)も図れますということだろう。
このマニュフェストの本質は「退散の道」であり新自由主義回帰宣言である。
ギデンズの「第三の道」を僕は読んでいない。アマゾンの紹介を読んだだけで、北欧型の社会民主主義に対する見解がまったく異なっていると思ったからだ。僕は北欧型の社会民主主義は企業活動を規制しまくっているとは考えていない。労働分配の公平性と社会負担義務、消費者の安全で縛っておりその他の余計な企業規制は行っておらず、むしろ教育によって強く支援していると考えている。そして北欧型社会民主主義でも市場経済は十分に機能し、しかも教育に力を入れることにより国際競争力も維持していると思っている。
なぜなら、高負担、短い労働時間で十分国内需要を満たすことのできる高い品質の商品を供給することができ、しかも国際市場においても、日本でも話題となったスウェーデン・アパレル「H&M」、フィンランドのNokiaなど十分に国際競争力を有する企業があるからだ。
話が横道にそれた。
マニュフェストに挙げられている「しかし、不幸の原因となる戦争や犯罪を排除し、病気や失業を予防、回復することは可能です。政治は権力であり、権力は人々の不幸の原因を取り除くことにこそ使うべきだと考えています。」(マニュフェストP4)という能天気な主張には次の言葉を引用しておこう。
引用はじめ
「全体主義は、近現代国家の明確な傾向特性である、と私は主張したい。全体主義の起源を明らかに二十世紀的現象として理解することは、監視技術の発達と工業化を遂げた戦争テクノロジーとの合体が生み出した、そうした政治的権力の基盤強化の分析を前提にしている。」「国民国家と暴力 」P337 アンソニー・ギデンズ著
引用終わり
さて、「第三の道」という誤魔化し、韜晦に続く政策の具体例にも若干ふれておこう。
ざっと見渡してまず気になるのは次の二点だ。
一点目はP9の6雇用という項目である。
鳩山政権時に掲げられていた
●常用雇用を拡大し、製造現場への派遣を原則禁止します。
●中小企業を支援し、時給1000円(全国平均)の最低賃金を目指します。
という項目はすっぽり抜け落ちてしまった。
今回のマニュフェストに残った
「●2011年度中に「求職者支援制度」を法制化するとともに、失業により住まいを失った人に対する支援を強化します。」という制度については、生活保護申請における門前払い、水際作戦に大いに貢献していることを指摘しておこう。
「●非正規労働者や長期失業者に対して、マンツーマンで就職を支援する体制を整備します。」については現在もハローワークで様々な制度が紹介されているが、このような制度で救われるほど雇用情勢は好転していない。しかも様々な要件での縛りがあり非常に使い勝手の悪い制度となっている。もちろん生活保護の門前払い、水際作戦には大いに貢献している。
雇用規制の修復は捨て去り、おざなりの項目になっていると言わざるを得ない。
二点目は税制改革だ。
消費税についてはP8の「今すぐやること」のなかで
「●早期に結論を得ることをめざして、消費税を含む税制の抜本改革に関する協議を超党派で開始します。」とたった一言触れられている。たった一言のみだ。なぜそれが必要か、それがどのような効果を挙げるのかもっと丁寧な説明があってしかるべきだと思うのだが。
消費税を除いた税制の抜本改革の内容は法人税についてしか述べられていない。
法人税については前回のマニュフェストにあった「●中小企業の法人税率を18%から11%に引き下げ、融資に対する個人保証を見直します。」を拡大具体化し
「●法人税率引き下げ
法人税制は簡素化を前提に、国際競争力の維持・強化、対日投資促進の観点から見直しを実施します。
あわせて、中小企業向けの法人税率の引き下げ(18%→11%)、連帯保証人制度、個人保証の廃止を含めた見直しを進めます。」(マニュフェストP6)となっている。
もちろん注目点は「国際競争力の維持・強化、対日投資促進の観点から見直しを実施します。」という文言だ。前回のマニュフェストでは中小企業の法人税率のみが掲載されていたが今回は全般的に見直すことが明記されている。
上述したP8今すぐやることには「●新たな政策の財源は、既存予算の削減または収入増によって捻出することを原則とします。」「2011年度の国債発行額は、2010年度発行額を上回らないよう、全力をあげます。」と述べられている。
法人税を減税してなおかつ国債発行額を抑えるために消費税がその穴埋めとして導入されると言うことなのであろう。所得税の最高税率の上昇や累進性見直しには、残念ながらというか、当然というか、一言も触れられていない。
そして、早くも10%に消費税を上げるという発言が菅総理の口からなされ、喜んでメディアが取り上げている。
Asahi.comより引用
「菅首相「消費税率、自民提案の10%を参考にしたい」」2010年6月17日
「菅直人首相は17日夕、将来の消費増税について、東京都内で開いた民主党の参院選マニフェスト発表会見で、「今年度中に税率や逆進性対策を取りまとめたい。税率については自民党が提案している10%を参考にしたい」と述べた。税率を上げる前に解散・総選挙で民意を問う可能性については「あるべきことだ」と述べ、前向きな考えを示した。」
引用終わり
10%という数字はすでに2006年5月8日に、経済アナリスト 森永 卓郎氏が「第30回消費税10%にこだわる財務省と自民党~増税なくして財政再建は可能~」で指摘している数字である。
ところで、こんな記事を見つけた。
ロイター企業調査:成長阻害要因、「需要不足」が43% 2010年 06月 17日
引用はじめ
「[東京 17日 ロイター] ロイターが実施した「6月ロイター企業調査」で、企業の成長を阻害している最大の要因を聞いたところ、「需要不足」が43%と最も多く、次いで「デフレによる収益伸び悩み」が21%に上った。」
引用終わり
そして、この記事の終わりは次の言葉で結ばれている。
引用はじめ(下線筆者)
「法人税率の高さ」を懸念する企業は複数あるものの、企業の成長を阻害する最大の要因として選択する企業はなかった。なお「その他」に回答した企業からは、原材料価格の高騰や欧州経済の鈍化などが挙げられていた。(ロイター日本語ニュース 寺脇 麻理記者)」
引用終わり
さて、ここで大きな疑問が沸き起こる。
「国際競争力維持のため法人税減税が必要」というのは企業のニーズにも合致していないのではないか。
そして、その穴埋めとして、さらに「需要不足」引き起こしかねない、消費税増税は新しく喧伝される「第三の道」として効果はあるのか。
菅直人は財務大臣時代に財務官僚から「学べば学ぶほど」必要だと吹き込まれ、自民と官僚が作った4年前の政策を、企業のニーズも国民のニーズも無視して、ただ焼きなおしただけではないのか。
日本の国債引き受け先は約95%が国内だ。対外債務を抱えるギリシャとは根本的に異なる。本当に日本の財政は危機なのか。もう80年代から財政危機は叫ばれていたが、そのときよりも国債残高は膨大になっているが、いっかな破綻する様子はない。
仮に財政が危機的状況だとして、その実体はどうなっているのか。その問題解決のために法人税減税と穴埋めの消費税増税が最適解なのか。
そもそも日本はどのような国家像を模索しているのか。
そのほかの項目も、今回は詳述しないがアメリカへの恭順と新自由主義への回帰という観点で読めば合点がゆくものが多い。
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