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2010年6月24日 (木)

日本の財政をざっと俯瞰する。3.国債の正体 財政問題とはつまるところ雇用規制破壊問題である。民主党は破滅的な亡国の道を歩んでいる。

前回、前々回のエントリーをまとめると次のようになる。

 86年から所得税、法人税、キャピタルゲイン課税の税率が継続して下がっており、逆に消費税は0%から3%へそして5%に上がっている。

 97年橋本政権下、消費税を3%から5%へ上げたために景気は腰折れした。そこで98年に法人税を減税し、前年の2倍の国債を発行し公共投資を増額したが景気浮揚の効果は無かった。単に法人税、所得税の下落分を消費税がカバーしたのみであった。

 翌年の小渕政権ではさらに法人税を減税し、所得税も減税し、前年を凌駕する国債を発行したがここでも景気浮揚の効果は無かった。法人税、所得税の下落分は消費税でもカバーしきれない状態となった。

 そして、小泉政権下では緊縮財政とキャピタルゲイン課税の減税が行われた。表向きGDPは上昇し、法人税は増収に転じたが、これは株取引の活発化とトヨタ、キャノンなどの外需によるものだった。

 その後、サブプライムローン問題、リーマンショックにより外需が激減した。鳩山政権下では法人税収、所得税収は大幅に下落し、現行の消費税率ではこの下落幅は全くカバーできず、大量の国債発行に頼らざるを得なくなり現在に至っている。

以上の概観から2つのことが言える。

一つは所得税、法人税、キャピタルゲイン課税の税率を引き下げたため財政の所得再分配機能が失われたということ。

もう一つ重要な点は、雇用規制の破壊により財政支出による乗数効果が失われたということだ。乗数効果とは一定の条件下において有効需要を増加させたときに、増加させた額より大きく国民所得が拡大する現象である。(菅首相が財務大臣のときに乗数効果の内容を問われ答えられなかったことは象徴的である)

前回のエントリーでは私的な経験から97年頃から雇用規制の破壊が顕著になったと述べたが、具体的なデータを見つけたので掲載しておく。(総務省統計局HP労働力調査 長期時系列データ【全国】雇用形態別雇用者数より筆者作成)

Hiseikikouseihi_5

 このグラフでの前年比とは、非正規雇用者の人数が前年から何%増加したかを示している。明らかに97年に顕著な増加が見られる。そして、97年からの雇用の破壊により非正規雇用者が増大、非正規雇用者に引きずられる形での正規雇用者の賃金水準の低下も起こり、労働分配率の低下を招いている。

 結果、莫大な額の国債を発行し公共事業などに資金を投下しても、その金は富裕層に留まり、消費性向の高い中間層、貧困層に回らず、消費を喚起することができず、結果、内需の拡大による景気回復への道が閉ざされることとなった。

 そこで生まれた国家財政の形とはどういうものであろうか。

俗に「金は天下の回りもの」といわれる。現状は「金は天上のみでの回りもの」となっている。

又、お金は経済の血液であるとも言われる。その比喩に従えば、国家財政という心臓からは潤沢な血液が流れ出ている。その血液は大企業、富裕層、天下り高給官僚までは潤沢に流れる。しかし雇用規制の破壊という血栓によりそれ以降の血流は阻害され、大部分の組織は虚血状態に陥っている。さらに末端組織は年間自殺者3万人以上という壊死を引き起こし、それが10年以上続いているということだ。そして、大企業、富裕層、天下り高給官僚で滞留した血液は個人金融資産という巨大なプールに流れ込む。そしてその血液が再び公債金という形で国家財政へと還流する。

国庫から富裕層へ、富裕層から個人金融資産へ、個人金融資産から再び国庫へという天上世界の金の循環が延々と続いているわけだ。

以上からメディアや政治家から発せられる言説に批判を加えてゆこう。

まず、ギリシャの財政を引き合いに出し日本の財政に対する危機感を煽る言説について。

これは国債を引き受ける「個人金融資産という巨大なプール」の内訳を見れば一目瞭然である。(Garbagenews世界の対外債務国ワースト20をグラフ化してみる」参照 このページの記事及び「日本の対外債務は? 世界の対外債務国ワースト20をグラフ化してみる(追補編)」の記事は大変わかりやすいので是非ご参照ください)

Nihonnkokusaihoyuushauchiwake_5

さらに世界の国々の対外債務の状況は以下のとおり。日本は入っていない。

Taigaisaimusougaku_6

日本の国債を引き受けている海外勢はたったの6%だ。そして、対外債務と対国内債務の決定的な違いは、対外には自国の徴税権は及ばないが対国内には及ぶ、ということだ。国内の個人金融資産のプールから利子を払ってお金を借りる代わりに、個人金融資産へ流れ込む前のお金を、徴税権力を行使して税金として徴収することが可能だということだ。要するに、キャピタルゲイン課税や所得税、法人税、の税率を上げてきちんと徴税権を行使し、所得の再分配機能を復活させればわざわざ利子を払って公債金を借り入れる必要は無いのだ。

従って、ギリシャの財政危機を引き合いに出す言説は、日本の国債残高に占める対外債務の少なさを隠蔽すると同時に、国の徴税権不行使の不当性をも隠蔽しているということで二重の悪質性をはらむものである。一顧だにする価値もない論外の暴論だということである。

もう一つ国民の情動に訴え恐怖を喚起する恫喝的言説として、国の借金は862兆円、国民一人あたり670万円の借金、これが子供達にそのまま引き継がれて良いのですか?という類のものがある。

国民一人一人が誰から借金をしたというのだろう。借金をしたのは国だ。そして、その肩代わりを富裕層に重く、庶民に軽く負わせることこそが徴税権力を持つ国家の役割ではないのか。

日本国憲法においては、納税、勤労、教育が国民の義務とされている。なぜ、公権力の行使を制限するための国家への命令書である憲法に、敢えて、国民の納税の義務その他が規定されているのか。刑事司法権力の次に強力な徴税権力を甘んじて公権力に与えているのはなぜか。その理由は自明のようにも思える。税金で禄を食む公僕は、その徴税権力を適切に行使して、国民の生存権、財産権をしっかり守り抜け、そのためには国民は納税の義務を敢えて受け入れるという意味ではないのか。

ここでも、国の徴税権力不行使の不当性の隠蔽が見られる。なおかつ、借金の肩代わりに限って平等性を標榜するところに、表向きは公平な負担という、消費税への誘導を始めからもくろむ悪質な暴言といわざるを得ない。

それでは、キャピタルゲイン課税、所得税、法人税、相続税などの直接税の累進性復活を主張する言説はどうであろうか。

僕はこれも不十分だと考える。なぜなら上述したように、雇用規制の破壊により財政支出による乗数効果が失われたということを重視したいからだ。

乗数効果が望めなければ、国の資金調達が借金から直接税に振り替わるだけに終わる可能性がある。なるほど、国家財政のバランスは改善するだろう。しかし、そこで支出されるお金は富裕層へ流れ込み、個人金融資産というプールを通らずに、富裕層から国家へそのまま還流することになる。末端へのお金の流れは改善されず、相変わらず国民の大部分の困難は解決されない。所得の再分配機能を真に復活させるためには乗数効果の復活が同時に図られなければならない。そして、消費を拡大し、内需を拡大し、その結果国家の税収増に結びつける、これこそが強い経済、強い財政、強い社会保障ではないのか。

又、社会保障費に増収分を当てるということにも注意が必要だ。社会保障といっても生活保護費、社会福祉費のように必要な人に直接給付される部分が増額されるのなら良いのだが、現在ニーズの高い介護保険給付費に重点がおかれる場合はコムスンのような前例がある。現場を担う介護職員の所得増に結びつけるためにはやはり雇用規制の修復が不可欠であろう。

従って、財政問題の解決には雇用規制修復を切り離しては解決できない問題だと思う。まさしく官庁の縦割り行政を超えた戦略的な対応が必要な問題なのだ。

この観点から言えば、どの政党も満足な回答をしているとはいえない。社民党の福島党首も消費税増税よりも法人税増税が財政再建に有効だといっているに過ぎない。

この点で唯一注目すべき発言をしていたのは亀井元大臣だけではないのだろうか。果敢な財政支出を唱え結果としての税収増は後からついてくると発言していた。と同時に、郵政社員の正社員化にも言及していた。明言はしていなかったが乗数効果に注目していたことは間違いないと思う。だからこそ閣僚から排除されたとも言えるかもしれない。

 民主党はいまのところ消費税増税、法人税減税を進めるといっている。なおかつ鳩山政権時に掲げられていた

●常用雇用を拡大し、製造現場への派遣を原則禁止します。

●中小企業を支援し、時給1000円(全国平均)の最低賃金を目指します。

という雇用規制の修復を謳う項目は放棄してしまった。

 このままでは橋本政権が97年、98年に犯した過ちをさらにひどい形で再び繰り返すことになる。そしてその後再び小泉政権のような新自由主義的路線が選択される可能性は限りなく高い。仙谷、前原、枝野、野田、玄葉。やはり民主党に参議院での過半数の議席は与えてはならない。

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