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2010年6月23日 (水)

日本の財政をざっと俯瞰する。2.歳出 国家支出は富裕層へ、そして巨大な個人金融資産というプールへ流れ込む 

前回は歳入について見てみた。国の資金調達先推移の特徴をもう一度記しておく。

98年以降、税率の低下によって所得税、法人税の税収は、GDPが増加しているにもかかわらず、実額でも低下傾向を示し、構成比ではバブル経済以前の構成比に比べると半分以下となっている。

・消費税はその穴埋めとして機能してきたが、それでも所得税、法人税の落ち込みをカバーしきれなくなった。

98年以降公債金の額がそれ以前の約二倍に跳ね上がり、その後その傾向は継続している。

・公債金激増の原資として個人金融資産額も98年以降増大し1,400兆円前後で推移している。

・低下傾向を示している税率であるが、特に個人所得課税の低さは国際比較によっても群を抜いている。

以上の特徴を持つ歳入だが、その歳入がどのような形で使われているのかを今回は見てみる。(財務省HP 予算・決算より筆者作成)

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まず、目に付くのは国債費である。国債費とは、国債に関する償還、利払い、事務取扱費の総コストのことである。要するに借金の返済と利払いであるが、構成比では一貫して歳出の20%前後を占めている。実額も増加傾向にある。

次に注目したいのは小泉政権下の緊縮財政である。特に社会福祉費の減額が酷い。実額ベースでも構成比でも小さな部門にもかかわらず激減させられていることがはっきりとわかる。これは生活保護費と同じく必要としている人への直接的な給付だ。それゆえこの部門には、後で述べる労働分配率の低下が影響しにくい。だからこそこの部門を徹底的に破壊したという点で、特筆に価する。

又、公共事業関係費も削減されている。公共事業関係費は橋本政権下、消費税増税による景気冷え込みをカバーするためぐっと増額された。しかし景気浮揚効果は無かった。公共事業に金をつぎ込んでも景気対策にならないとして、それ以降は暫減され小泉政権下ではさらに切り詰められた。地方が疲弊しシャッター街が問題になったことは記憶に新しい。そしてこのような緊縮財政にも関らずきっちりと温存されてきた費目が防衛関係費である。

この緊縮財政下、減額を補うように増加してきたのが年金医療介護保険給付費である。

さて、データをつらつら眺めていても資金配分の本質的な問題は見えてこない。

ここで労働分配率の低下という視点を導入し推論を展開したいと思う。

労働分配率の低下はいろいろなところで言及される。主にワーキングプアの問題、労働環境の苛酷さなどで取り上げられ改善を求める声が上がる。しかし、ここではこの労働分配率の低下が国庫の歳出(資金投下)にどのような影響を与え、回りまわって歳入(資金調達)にどのような形態変化をもたらしたかを考察するために取り上げる。

下記の表を見て欲しい。(厚生労働省HP白書平成18年版 労働経済の分析参照)

Photo

注目して欲しいのは86年と06年の労働分配率だ。ほぼ同じだがGDPは昨日見たとおり約1.5倍、税率も86年に比べると所得税最高税率が70%から40%へ、法人税が40%から30%へキャピタルゲイン課税が26%から10%へ減率されている。さらに付け加えると有価証券取引税と取引所税は99年に廃止されている。

何が言いたいかと言うと、86年に比べ、一般会計から支出されたお金が一般の庶民に行き渡らずに富裕層に流れ込み、しかもそれに対する課税率が国際的に見ても極端に低く直接税で捕捉され国庫に還流するという流れがかなり狭まっているのではないか、ということである。

例えば公共事業。大手ゼネコンが多くを分捕り、役員報酬、株主配当、幹部正社員の給与へ結実する。そこで雇われている非正規雇用や派遣社員には文字通り滴り落ちる(トリクルダウン)のみだ。

そして残りが下請けの土建屋に流れる。ここでも土建屋の経営者が多くを分捕り現場の作業員は安い労賃で働かされる。結局大多数の消費余力は伸びず、地方ではシャッター通りが無残な骸をさらす。

86年頃といえば僕はちょうど学生だった頃だ。夏休みはよく土方仕事のバイトをしたが、日当はこの時代で1万円位、結構良い稼ぎだった。当然その仕事を本職としている二十歳前後の兄ちゃんたちと仲良くなるのだが、彼らの稼ぎが半端ではないのだ。月3040万にはなっていたと思う。学校ではヤンチャをしていたので怖いもの知らず、若くてガタイが良くて、意匠を凝らした車に乗って金があるんだからとにかくモテる。彼らのナンパの大本営発表を聞くたびに羨望を禁じえなかった。今とは隔世の感がある。

年金医療介護保険給付費にも同じことが言える。コムスンの不祥事は記憶に新しいが介護ビジネスを企業活動に利用し大もうけする奴がいる反面、現場の介護士たちは重労働、低賃金にあえいでいる。

そして、あらゆる歳出に官僚天下りが寄生しピンはねをするという構造である。

もう一つ注目して欲しい時期がある。98年だ。なるほど、この時期は不況期ということで労働分配率は上昇している。しかし、僕の実体験からすると、まさにこの時期に労働破壊は始まっている。

 実は95年頃から雇用制度の激変が用意されていた。95年頃から突然、能力給導入、雇用形態の多様化が会社から発表され、御用組合は一応反対する姿勢は見せながらもその必要性を組合員にせっせと説いてまわりはじめた。表向きは景気低迷や雇用ニーズの多様化に対応するとの建前だった。しかし、この頃に「国際化への対応」をテーマとしたセミナーに参加して知ったのだが、実は多くの企業が国際会計基準導入への対応を迫られて同じような人事、賃金制度の変更に取り組まざるを得ず、このセミナーでは会計基準の変更がどれほどの衝撃を日本経済に与えるかという話に終始していた。どうりで、猫も杓子もほとんど同時に能力給導入と叫び始めたわけだ。 

このときの国際会計基準の要点は資産の時価評価、連結決算、退職金給付債務の決算書への記載などで2002年までの完全実施されることになっていた。このため、経営陣にとっては財務内容の大幅な改善が必須となっていた。そのために大幅な人件費削減が最重要課題となり人事制度、賃金制度の変更が画策されていたのだ。そして、97年に能力評価給、非正規社員の大量導入、正社員の異動の可否による賃金格差の設定などそれまでの制度をかなぐり捨てた大改悪が導入された。そして98年、苛烈なリストラの嵐が吹き荒れ多くの中高年社員が退職を余儀なくされた。

このような経験からすると、98年に個人金融資産が激増し、歳入に占める公債費の突如とした増額にも納得がいくのである。この頃にすでに今の財政の形が作られ始め、小泉がこれを仕上げたと見るのが妥当であろう。

整理しよう。

一般会計の歳出は雇用規制の破壊により富裕層に流れ込む。そして現在の低い税率により、その流れから直接税を捕捉することが困難になっている。この金の流れは富裕層の個人金融資産という巨大なプールに流れ込む。そして国はせっせとその巨大なプールから国債という借金で資金調達をする。法人や金持ちから直接税のおこぼれを頂き、貧乏人からは消費税として税金を巻き上げる。そして毎年莫大な国債費、国債の償還が利子付でこの巨大なプールに還元される。その他の支出を通して再び富裕層や高給官僚に金が流れ込む。それが又巨大なプールに流れ込み・・・・

これが大まかなこの国の資金調達と資金投下の流れのからくりだ。

このように見てくると国債は単なる借金などとはとても言えない。

次回は国家の徴税権不行使と国債の関係を俯瞰しながら、この国の財政に対するまやかしを暴いてゆきたいと思う。

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